チンパンジーが排尿すると、近くにいるほかのチンパンジーもつられて排尿しやすいことを、京都大の研究チームが600時間超の観察から突き止めた。集団内での順位が劣るチンパンジーほど誘発される傾向が見られ、排尿という生理現象が社会的な影響を受けることが浮かび上がった。
動物で排尿が集団内で伝染する現象の報告は世界で初めてという。論文が20日付の米専門誌カレント・バイオロジーに掲載される。
観察をしたのは京大大学院博士課程の大西絵奈さん。
行動が伝染する現象の例は、あくびや集団移動の際の出発などが知られている。均一に伝染するとは限らず、あくびなら親しい個体間で伝染しやすいし、出発ならば集団内の社会的地位が高い個体や人気者の個体がリーダーになりやすいなど、社会性との関連も指摘されている。
大西さんは、熊本県宇城市の京大野生動物研究センター熊本サンクチュアリの28~53歳のチンパンジー20頭(5頭×4集団)を計604時間かけて観察し、1328回の排尿を記録した。
まず、個体や時間帯ごとの排尿確率を計算し、コンピューターシミュレーションを繰り返して、観察したチンパンジーの排尿行動が偶然の2倍以上の確率で同期(60秒以内に排尿)していることを突き止めた。ただ、これでは伝染しているのではなく、同じ時間に食事しているから同期しやすい可能性も考えられる。
そこで、伝染しているかを調べるため、排尿時の個体間の距離を調べた。①片手で届く(50~60センチ)②3メートル以内③3メートル以上――の3分類したところ、距離が近いほど排尿が伝染する割合が高かった。
さらに個体間の仲良し度や…